2014年8月18日月曜日

サービスデザインとは? vol.3

前回は「私たちが考えるサービスデザインとは?」について触れた。今回はサービスデザイン研究所の事業コンセプトに込めた想いについて考えてみたい。

私達はサービスデザイン研究所を立ち上げる前から15年以上にわたり、様々な職種で「顧客満足度向上のための研修」を数多く企画、実施してきた。それによって着実に顧客満足度が上がり、業績にも反映されたというご評価をいただくことができ、やりがいも感じられた。

しかし、新たに「サービスデザイン研究所」としてスタートし、”サービスデザイン”という思考フレームで物事を捉えるようになってから、逆に当時の企業の取り組みに違和感を覚えるようになった。

成熟化が進み、従来の企業のパラダイムだけでは行き詰まりが出てくる中で、「企業主導から顧客主導へ」「プロダクトアウトからマーケットインへ」「モノからサービス」「顧客視点・顧客志向」「付加価値アップ」…など、多くの概念や言葉があちこちで使われ、その重要性が説かれている。しかし、その大半がモットーやスローガンで終わるケース、CS推進室の設置やアンケートの実施でやったつもりになるケース、あるいは応対研修など顧客接点だけを重視しているケース等々、それぞれ「点」としての取り組みに終始し、トータルの”デザイン”としてみたときには、実態は何も変わらないことを強く感じるようになった。

来たる時代に備えて、今本当に変えなければならないのは、そういう表層的なことではなくもっと本質的なことである、ということを少しでもご理解いただきたい。それが強い想いだっただけに、サービスデザイン研究所の事業ミッションを以下のように決定した。
「独自のサービスデザインスキルにより、サービス革新に挑戦する組織の顧客価値創造支援を行います」
独自のサービスデザインスキルについては後述するとし、ここでは特に私たちの思いを凝縮する言葉である”サービス革新への挑戦”と”顧客価値創造”について触れておきたい。

ここで言う“サービス革新”とは、部分や小手先ではなく、「自社の事業コンセプト自体を“顧客価値(顧客体験価値)”の観点でリ・デザインする」という意味である。それは最終的に、「事業のあり方自体を全て見直す」ことにもつながりうる。

たとえば、「あなたの会社の事業は何ですか?」と聞かれて、シンプルに「車の販売です。」と定義するか、例えば「元気な地域づくりです。すなわち、地域の皆様がそれぞれの暮らしにあった安全・快適な車を利用し、より元気に楽しく暮らしてもらえるようにすることです。」と定義するかで大きな違いが生まれる。
後者であれば、地域の賑わいづくりに貢献する、あるいは最適な車選び~快適な使用~楽しく健康な生活との融合につながる取り組みの提案など事業領域も戦略も大きく変わってくる。

つまり、【事業コンセプト=サービスコンセプト】と捉え、顧客が何をどう経験し、そのような価値を実感するかの視点で時代に合わせて再定義することから全てが始まると考え、それをミッションに掲げた。

しかし、それは決して簡単なことではない。そこに辿り着くまでには、以下のようなパラダイム転換が必須である。(左側に並べた”古いパラダイム”は、実際に私たちがサービスについて語った際に、企業のご担当者から出てきたご意見である。)


「古いパラダイム」→【私たちの提言】

①「うちはサービス業じゃなくて製造業だから、サービスは二の次。」
→【サービスとは”顧客価値創造活動”をさします。ですからすべての事業はサービス業と捉える必要があります】

②「サービスっていわゆる”付加価値(おまけ)”。ないよりはあった方がいいけどね。」
→【サービスとは”本質的価値”を指します。どのようなサービスを創造・提供するかは事業の根幹です。】

③「サービス向上のためには、応対スキルを上げることが一番早い。挨拶運動を始めたよ。」
→【サービスを本当に価値あるモノにするには”サービスコンセプト”を明確にし、それをお客様が体験を通して実感できるようなサービスプロセスを創り出すことが必須条件です(サービスデザイン)】

④「お客様の声を聞けと言われるから、アンケートを採って、分析して、少しでも得点が上がるよう に努力している」
→【それだけで満足せず、お客様と価値を共創するあり方を研究することも大切です】

⑤「いろいろ変革したくても所詮”上”の考え方が変わらない限り、現場は何も出来ない”」
→【顧客の視点から見た自部門のサービスコンセプトは何であるべきかを考え、それを実現するには、組織全体としてどうあるべきかを描く力をつけることが大切。それを提言し、現場から変革を起こす働きかけも大切です】


時代は変わっても古いパラダイムが生き残っていると実感することもまだまだ多い。たとえば、オリンピックにしても顧客は誰か、どのような体験をしてもらうのか、それを踏まえたトータルデザインが描けているかなど疑問もある。

しかし、サービスは最初から完璧なデザインで存在しているものではなく、時代や状況の中で、動き続けるモノであり、関係者の知恵によって進化し続けるものである。
私たちはこの難題に挑み続ける中でこそ、見えないものがよりはっきり見えてくると信じて、学び・実践し続けたいと考えている。


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サービスデザイン研究所
Service Design Institute
代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)













▼ホームページ:http://sdi.ecnet.jp/
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▼ブログ:人が育つコールセンターづくりへの挑戦!コールセンターブログ: http://sdi20041101-callcenter-fukuroi.blogspot.jp/


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 2015年1月より店長職の方のためのマネジメント講座を開催いたします。
詳細は下記ご案内をご覧ください。
店長カレッジのご案内(PDFファイル) 

【グローバルサービスデザインで新たな時代を切り拓く!】
独自のサービスデザインスキルにより、サービス革新に挑戦する組織の顧客価値創造支援を行います。

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2014年8月11日月曜日

サービスデザインとは? vol.2

会社を設立した際、手作りでHPを作成した。専門のwebデザイナーがいないため、サービスデザイン研究所として打ち出したいことを、どのように視覚的に表現するかに非常に苦労した。図柄、表、グラフ…様々なアイディアを出してみたが、どうもしっくりこない。そこで当面は『文字』で表すことにした。
そのひとつが、
”サービスデザインとは、お客さまの喜びや感動を創造する、ココロとモノの調和のとれた“かたち”を構築することです 。”
 強調したかった1つめは”調和”である。”調和”とは「うまくつりあい(match)、全体が整っていること。いくつかのものが矛盾なく互いにほど良いこと。(harmonious)」(広辞苑より。括弧内は筆者が付加したもの。)とあるが、私達は、この”調和”はサービスデザインを創り出す、あるいは提供する上で必須であると考えた。

当時は、すでにCS活動(Customer Satisfaction)は一般的になりつつあったが、サービスに対する認識はさほど進んでいなかった。すなわち、
「CS=直接顧客接点をもつ部署が感じの良い応対をすればよい」
「CSアンケートの結果を見て、悪い部分を改善すれば良い」
というサービスを部分(点)でとらえる考え方が根強くあった。
サービスデザインは、そういった考え方を払拭し、『誰に、どのような価値を、どのように提供するのか』というサービスコンセプトをしっかり作る。そして、それを顧客が実感できるようにするための入口から出口までのサービスプロセスを作り上げ、仮説‐検証を通じて進化させていく。つまり、部分ではなく全体が調和して、初めて価値提供が出来るという考え方を強調している。

そしてもうひとつ強調したかったのは「ココロとモノ」という点である。「物理的にも動線としても無駄なく調和が取れているから、問題ないでしょう」というスタンスでは本当の意味での顧客価値は創造できない。そこに必要なのは、デザインする側とサービスを提供する側と同時に、それを体験し、価値を享受する側のココロである。サービスを体験するプロセスの中で、お互いにどのようにココロが動き、満足感や幸福感を感じるか…、すなわち、上記で”喜びや感動”が生まれるか、それも含めたデザインであることが大切だと感じるからである。

しかし、これも想いはあってもなかなかうまく表現ができない。困っていると手をさしのべてくれる人がいた。大学時代の同僚である。HPへの支援者メッセージを依頼したところ、以下のような文章を寄せてくれた。
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「サービス」というものの核心にあるのは、他者に対する共感だと思います。自分以外の人々が何を求めているのか。何をしてあげることが他者にとってもっとも便益を、あるいは満足を、さらには「幸福」をもたらすのか。そうしたシンパシーや想像力が「サービス」の根本をなしています。

商品の高付加価値化が加速している現在の経済構造のもとでは、いわゆる「サービス産業」であるか否かに関わらず、こうした「サービス」の精神がすべての経営組織にとって不可欠となっています。そして「サービス」の精神は特定の顧客層だけに向けられるものではなく普遍的なものであり、それゆえにまず第一に組織の構成員相互の間において醸成される必要があります。すなわち、「サービス」=共感の原理に基づいて行動する企業とは、その外部だけでなく内部に対しても高度の感受性を維持しつつ、人々の「幸福」の創造を追求する組織であるといえます。

しかしまた、他者に対してそうした共感を抱けるかどうかは実はとても難しいことです。それゆえ、「サービス」は常にそうした感受性を喚起し、維持するしくみのデザインと稼働を必要としています。サービスデザイン研究所は、この点に関する多くのノウハウを蓄積し、かつ生み出すことによって、「サービス」の革新をめざしている組織であると考えます。日本の経済社会に対してサービスデザイン研究所が大きく貢献することをこころより期待しています。


本田 由紀
東京大学大学院教育学研究科教授
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私は10年たった今でも色あせないこの文章が大好きである。一見難しそうに見えるが、人への関心、愛情が詰まっていると感じるからである。

この後、私は大学院(MBA)へ行って「サービスマーケティング」「サービスマネジメント」について専門の勉強を始めることになるが、当時は『これからのサービスを変えたい!』という熱い想いだけのスタートだっただけに、未熟な面も多々あった。しかし、サービスデザインという言葉に何か新しい未来を感じた気持ちは、ずっと大切にしたいと思っている。

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サービスデザイン研究所
Service Design Institute
代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)













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